大雪山と雪山童子

11月を迎え、だんだんと寒い日が続くようになり、少しずつ雪もちらつくようになりました。

お寺から見える大雪山の山々には一足早く雪が積もり、まさに名前の通りの姿を見せています。

仏教の昔話に、この大雪山のような雪深い山を舞台にした、雪山童子(せっせんどうじ)という、ある修行者の物語があります。

昔、雪山童子が雪深い山で修行していると、どこからともなく、

諸行(しょぎょう)無常(むじょう) 是生(ぜしょう)滅法(めっぽう)(すべては移り変わり、生じては滅びてゆく)」

という、この世の真理を説く有難い言葉が聞こえてきました。

続きの言葉が気になる雪山童子が声の主を探すと、それは恐ろしい姿の鬼でした。

その鬼は、

「言葉の続きが聞きたければ、お前を食べさせろ」

と言いますが、雪山童子はこの言葉に怯むことなく、自らの体を捧げることを約束します。

雪山童子は鬼から、

生滅滅已(しょうめつめつい) 寂滅爲樂(じゃくめついらく)(その移り変わりや生滅を超えた先に、安らかな悟りの境地がある)」

という続きの言葉を聞くと、鬼との約束を守るため、木から飛び降り命を絶とうとします。

そのとき、本当の姿である帝釈天に変身した鬼は、雪山童子を空中で受けとめ、

「あなたこそ真の道を求める人である」

と讃えたと言います。

雪山童子の行いは、真似することはもちろん、今の世間の道徳観から考えると、理解することも難しいかもしれません。

しかし、本当に大事な事の為には、命をも懸けるその強烈な姿は、ついつい毎日を惰性で送ってしまう私達になにか訴えかけるものを感じます。

否が応でも、寒さで身の引き締まる思いがするこの季節ですが、大雪山の山々を眺め雪山童子を思うと、より一層その思いが強くなります。