仏教と植物のお話③~アツモリソウ~
今回はアツモリソウについてお話させて頂きます。
前回の、「仏教と植物のお話②~クマガイソウ~」でお話したとおり、アツモリソウは平敦盛(たいらのあつもり)をモチーフにした植物です。
ラン科の一種で、低山に自生し、絶滅危惧種にも指定されていることはクマガイソウと同じですが、アツモリソウは「幻の花」とも呼ばれているようで、より希少なようです。
名前の由来もクマガイソウと同じで、マントの様に翻す母衣(ほろ)を花の姿に重ねていますが、一回り小さいアツモリソウの姿は、まだ若者である平敦盛をより彷彿とさせます。
当山の庭では、このアツモリソウとクマガイソウは近くで咲いていますが、モチーフとした熊谷直実と平敦盛が、源氏と平家として争う関係性だったことを考えると、何か不思議な因縁を感じます。
仏教には、怨み敵対した相手でも親しい人と同じように接することを意味する、
「怨親平等(おんしんびょうどう)」という言葉があります。
争いあった二人の姿をモチーフにした植物が、互いに近くで咲いているその姿は、まさにその「怨親平等」を表しているようです。
開花時期は互いに5月頃ですので、お近くにお寄りの際は是非ご覧いただき、「怨親平等」を感じて頂ければと思います。